見出し画像

『社会教育士フォローアップ研修』レポート2024 in 和歌山県

 残暑も落ち着き、秋の気配を感じる季節になりました。芸術の秋、文化の秋、スポーツの秋・・・行事やイベントを実施するには最適な季節になってきましたね。今年も各地域で様々な取組が実施されていることと思います。
 さて、話は変わりますが、文部科学省では今年度から新たに「社会教育士フォローアップ研修」を委託事業として実施しています。今年度は、北海道教育委員会と和歌山県教育委員会が受託し、本研修を実施しています。
 今回は、和歌山県主催の社会教育士フォローアップ研修の様子と、本研修を担当されている教育委員会事務局の方々と情報交換した内容を、レポートさせていただきます。

〇「社会教育士フォローアップ研修」とは

 社会教育の裾野の広がりを受けて、社会教育人材が果たすべき役割は多岐に及んでいます。社会教育士の称号を取得して終わりではなく、その後の活動に繋げていくためにも、地域の実情に応じた継続的な学習機会を確保することが必要不可欠です。また、研修を通じた地域におけるネットワークの構築により、社会教育人材が互いに学び、支え続ける仕組みづくりも必要とされています。こうした背景を踏まえ、今年度から「社会教育士フォローアップ研修」を実施しています。北海道と和歌山県の研修の概要は以下のとおりです。

●北海道教育委員会:8月~10月にかけて北海道厚真町を会場に、厚真町が抱える問題や課題に対して、現状把握から事業の企画・提案を行うワークショップを実施。

●和歌山県教育委員会:第1回目は7月に和歌山県太地町にあるくじらの博物館を会場に、『「誰もが平等に楽しみながら学べる博物館」をめざして』というテーマのもと、くじらの博物館副館長の中江さんのお話を踏まえ、“居場所”を視点として、参加者自身が行っている社会教育事業について振り返るワークショップを実施。第2回目は以下のレポートを参照ください!

〇和歌山県のフォローアップ研修を訪問

 今回視察させていただいた2回目のテーマは、「大人の好奇心をひらく~Feel度Walkと知図が生み出す学び~」。住んでいる地域で社会教育の手法を用いて、地域づくりや人づくり、つながりづくりに取り組みたいと思っていても、住民同士の関係が希薄なため、なかなかうまくいかない事例を多く目にします。そんな課題意識を踏まえ、一般社団法人みつかる+わかる代表理事の市川 力(いちかわ ちから)さんを講師としてお招きし「Feel度Walk」という手法について学ぶ研修が企画されていました。
 「Feel度Walk」とは、簡単に言えば、探検です。歩くことをとおして、
 1 身のまわりのささやかな出来事を観察する
 2 偶発的な出会い、出来事を面白がる
 3 思いつきを大胆に語り、試行錯誤する
ということを行います。「歩く」は、まってばかりで しずつ進むと書き、だからこそ観察の感度が上がり(Feel度Walk)、そこから生まれる発見に注目していきます。

 人が生まれながらにして身に付けているという「なんとなくセンサー」を作動させ、五感を使いながら「あれ?」「おや?」となんとなく気になったことを、とりあえず写真に撮っていきます。そしてあてもなく追いかけます。これを繰り返します。

Feel度Walk中

 その後、会場に戻り、お気に入りの一枚を選び、写真を見ながら、クレヨンやマジック、色鉛筆などを使って、発見したことを絵に描き起こします(スケッ知図)。
※知図とは、自分なりに観察した知があつまった図のことです。

スケッ知図を作成中!

 スケッ知図ができあがったら、壁に貼り、一人一人がみんなの前で説明をしていきます。その中で、今まで自分が気づかなかったことに気づいたり、この人はこういうことに興味があるんだ!という気づきも生まれたりします。こうやってできた仲間とともに面白がり、発見を共有することに価値があり、相手の想いやそれに込められた意味を考えるようになるそうです。
 例えば、行政が街中につくったものも、それに込められた想いや意味に気づき、住民と行政との関係が良好になったりする事例がいくつもあり、住民同士でも同じで、自然と人との関わりが生まれたりすると講師の市川さんはお話されていました。良好な人間関係を築くだけでなく、地域住民みんなで学びのスタートラインに立つための手法としても「Feel度Walk」のもつ価値を感じられました。

スケッ知図をみんなで共有!

〇和歌山県教育委員会事務局の方のお話

-社会教育士フォローアップ研修を開催しての成果や手応えを教えてください。

 例年、県が実施している社会教育関係職員を対象とした研修と兼ねる形で、本研修を実施したので、社会教育士の方だけではなく、現在、各市町村で社会教育主事として働いている方もいらっしゃいました。そのような形で実施することで、社会教育主事が、社会教育士と連携しやすいと考えました。
 例年は行政職員のみの研修でしたが、今年は、社会教育士同士や社会教育主事と社会教育士が研修をとおして交流したことで、これまでにない幅広いつながりづくりのきっかけとなったことを感じました。様々な立場の社会教育人材同士が互いを知る機会をつくることが、今後の活動にもつながっていくのではと考えています。
 併せて、県として、本研修の参加者にメーリングリストへの登録を呼びかけ、研修終了後も登録者同士で情報交換できる仕組みをつくっていこうと考えています。

-研修実施を通して見えてきた課題はありますか。

 課題としては、行政機関にいる社会教育士については把握が可能ですが、実際に地域で活動されている社会教育士の方となると、市町村にも声をかけてみましたが、把握するのが難しい状況にあります。また、受講生から、社会教育士はそれぞれ専門分野をもっているので、その分野に関する研修があると良いというお声もいただきました。
 まずは、社会教育士のネットワークを広げつつ、それぞれのニーズを把握していくことが大事かなと思っています。社会教育士がもっと社会に認知されるよう広報活動にも取り組んでみようと思います。

〇最後に~社会教育士フォローアップ研修を視察して~

 これまで社会教育主事等の行政職員を主とした研修は視察する機会がありましたが、今回は社会教育士を参加対象としている研修ということで、初めての機会でした。地域の課題解決に向けて、自分ができることに取り組みたいという地域の社会教育士の方々の熱い想いに触れることができました。また、和歌山県のご担当者の発言にもあったように、社会教育士のつながりやネットワークという環境が、今後の社会教育士の方々の力を十分に発揮していただくためにも、重要であるとあらためて感じた次第です。
 
 最後に、本研修に参加された皆さま、研修を企画・実施された和歌山県教育委員会事務局の皆さま、関係者の皆さまに感謝申し上げます。
 最後までお読みいただきありがとうございました。