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約20年、発令のない社会教育主事有資格者から、社会教育士へ【公益財団法人×社会教育士】

令和2年度から開始している「社会教育士」制度。社会教育士(社会教育主事)として活躍する方の活動、そして「社会教育」への想いの”記録”を新コーナー「わたしの社会教育士ノートsince2024」でフォロワーの皆さんと共有します!
※本記事の内容はあくまでご本人の報告に基づくものとなっています。

【わたしの社会教育士ノートsince2024 No.3】

約20年、発令のない社会教育主事有資格者から、社会教育士へ

岡崎 和貴さん(公益財団法人山形県生涯学習文化財団)

【経歴】
大学卒業後に百貨店に勤務し、売り場や外商を経験し退職。平成4年10月、(財)山形県長寿社会推進機構に入職し、高齢者の健康生きがいづくり事業に携わる。(財)山形県長寿社会推進機構の解散により、平成16年4月より(財)山形県生涯学習文化財団(平成24年4月1日より公益財団法人に移行)に入職し、山形県生涯学習センターに配属され、現在に至る。


最初は、上司にお願いされて・・・

—「社会教育士」の称号を取得するまでー

平成16年の4月より、生涯学習センターの勤務となり、当時の上司から「県の生涯学習センターにも社会教育主事有資格者が必要なので、社会教育主事講習を受講して欲しい」旨の話を受け(いわゆる業務命令ですが(笑))受講したのがきっかけです。

以来、約20年間、社会教育主事としての発令もなく(私は教育委員会事務局の職員ではないので・・・)、あくまで社会教育主事有資格者という立場で社会教育・生涯学習事業に関わってきました。

生涯学習センターの業務を行うに当たっては、「教育基本法」や「社会教育法」等の法制度も学んでおく必要がありますし、事業計画等を作る場合も社会教育計画の策定手法等がベースとなってきます。

かつて社会教育主事講習で学んだことは、社会教育や生涯学習を業務とする私にとっては基本となっていますし、学んだことを心のよりどころとして、事業の計画や実践を行っています。

ですから正直、事業を行うに当たっては、特に発令がある無しは気にせずにはやれたと思っています。

しかしながら「社会教育主事」と言う肩書があるのと無いのとでは、対外的な対応は多少なりとも違う感じがしますし、当然あった方が説得力はあるのかなと感じたこともありました。

「この有資格を何とか退職後も活かしていきたい」。そう思っていたときに、当センターの研修等でお世話になっている山形大学の先生から山形大学でも新たな2科目(「社会教育経営論」、「生涯学習支援論」)を受講すれば、社会教育士という称号を得ることができるようになったことを聞き、チャンスとばかりに科目等履修生として入学し、2科目を修得しました。

追加の2科目の受講による、社会教育士という称号の取得は、対外的な部分でのメリットになるのではないかと感じています。

様々なきっかけの中で人のつながりを創り出す社会教育

ー私が考える社会教育、そして社会教育士としての役割ー

これまで社会教育を学ぶに当たって、様々な先生方からのお話を聴いたり、講座やセミナーを企画実践してきました。

その経験を通して私が学び考えた社会教育とは、

様々なきっかけの中で人のつながりを創り出すことによって、自分たちの暮らしや地域をよくしていこうとすること。

地域は人のつながりでできていますし、その人のつながりが強ければ強いほど暮らしやすい地域になります。そのような地域を創り出すために学習することが、とても大事で、それを学ぶのが社会教育の役割なのではないかと考えています。

そんな役割を踏まえると、私自身、社会教育士としては、自分自身が人とのつながりをつくること、そして接着剤のように人と人をつなげていくことができればよいなと思っています。

普段の仕事では、元気高齢者の力を地域の生活支援活動に活かしてもらう担い手養成研修等に力をいれていることから、地域福祉の課題解決を学習する際に社会教育の手法を用いた学習を取り入れた研修等の実践を心がけています。併せて部局をつなぎながら課題解決に向けた取り組みを実践していきたいです。

市町村の生活支援体制の整備を考える研修の1コマ

ー「つながり」をもつことの大切さ、「俯瞰」の目をもった課題解決ー

「人と人がつながる」ことの大切さは、研修会等でかかわる地域の方々の声からも感じられます。

ある町での生活支援体制整備協議体メンバーを対象にした研修会でのことです。私はグループワークのファシリテーターをしていました。

この町の協議体メンバーは町の地域福祉関係や社会教育関係の団体、自治会等の長で構成されており、高齢者が中心です。このときのグループワークの話題は「現在の協議体をどう活性化していったらよいか」。意見としては「もっと若い世代のメンバーが必要で、若い世代の意見がほしい」「でも協議体メンバーには若い人がいないからそれはなかなか難しいね」と言った少しネガティブなものが多く出ていました。

そんな中、ある参加者が言います。

「でも私たちのメンバーにいなくても、同じ団体や私たちの周りには若い世代はいるよね。そういった方々から色々意見をもらって、持ち寄ればもっと視野が広くなって協議体の活動に活かせるんじゃない」

私は、この方の俯瞰の目をもって、視野を広くして課題解決を考えようとする言葉が印象に残りました。他の世代や異業種等からの意見をもらうことでヒントを得たりできることに改めて気づき、つながりをもつこと、活かすことの大切さを実感しました。

ちなみにプライベートでは、バレーボールのスポーツ少年団の指導者もやっておりますが、日ごろの練習指導や大会参加だけではなく、スポーツを通した子供たちへの様々な学びや他チームとの交流を積極的に行い、子供たち同士のつながりづくりを行っていきたいと考えています。

スポーツ少年団活動でのワークショップの様子
試合での1コマ。『さぁ、ここからが勝負だよ!』

地域コミュニティの再生が課題

ー社会教育の役割ー

現在、業務として地域福祉関係に注力していることもあり、少子高齢化や人口減少、東京一極集中などの中で、地域や地方が急速に衰退しており、地域コミュニティの機能低下が問題になっています。

特に高齢化率の高い地域では、単身世帯や要介護・要支援高齢者が増え、暮らしの中での課題が山積しているのが現状で地域コミュニティの再生が課題ではないかと感じています。ただ、高齢化は現象であり、決してマイナスな面ばかりではありません。

肌感覚ですが、高齢者の約80%は元気高齢者なので、これまで培ってきた経験や知識を活かしながら地域活動に参画してもらえるような仕組みづくりを考えていくのも社会教育の役割だと感じています。

ー現場から感じる高齢者のパワー:活動見学をしたときのエピソードー

山形には、「やまがたおもちゃ病院」という(公財)山形県生涯学習文化財団が行った「おもちゃドクター養成講座」受講生が中心となり平成21年に設立したボランティア団体があります。

以下は、そのボランティア団体の活動を見学させていただいたときのお話です。

ボランティア団体「やまがたおもちゃ病院」でおもちゃドクターとして壊れたおもちゃの修理活動するAさん。

目の前に修理を依頼したお子さんが座り、持参したおもちゃが治るかどうか不安そうにAさんの修理の様子をみていました。このおもちゃはお気に入りのおもちゃだそうです。Aさんは忙しい中でも

「大丈夫、おじさんが頑張って治すから」

とか

「ここが壊れていたから動かなかったんだよ」

とお子さんと楽しそうに声をかけながら修理を行ってます。
おもちゃが動くようになったとき、そのお子さんが言います。

「おじさん!ありがとう」

笑顔で御礼を言われたAさんも

「良かったね。大事に遊ぶんだよ」

と笑顔で返してました。
その日の活動が終了したあと、私はAさんに

「なんでこの活動をボランティアで続けているのですか?」

と尋ねました。すると、

「退職前の仕事がちょっとしたエンジニアで、退職後に何かできないかと思っていたところに『おもちゃ病院』の新聞記事を目にして、ドクター養成講座を受講し、おもちゃドクターをはじめたんだけど、やっぱり治して渡したあとの子どもさんの笑顔と喜びようが何とも例えようがない。またモノを大切にすることも直接教えることもできるしね。活動は私にとって、やりがい・満足感がある。生きがいだよ」

とおっしゃっていました。

こうした高齢者の方のパワーを地域学校協働活動の推進役や青少年育成の担い手、地域の生活支援の担い手として発揮していただき、また地域のよさを子供たちに伝え、若い世代がいずれは生まれ育った地域で暮らしていくことを望むような地域にできればと思います。(理想ですが・・・)

またこのような課題解決には再度コミュニティ機能を高めることも必要です。地域は人のつながりでできていますので、まず地域で助け合っていこうという気持ちの方々を増やし(人づくり)、地域づくりにつなげていくことが大切です。

コロナ禍になって、個で活動することが増え、これまで当たり前のようにあった地域のお祭りや文化活動等が少なくなり、助け合いやお互い様という考えが足りなくなってきたような気がします。

地域も家庭も子供たちのすべての世代がウェルビーイングを目指し、いつまでも暮らし続けられる地域コミュニティが再生できるよう微力ではありますが、社会教育士として何らかの形でかかわることができればいいなと思います。

特にライフワークであるスポーツ少年団活動を通じ、子供たちが成長していく段階で、地域のよさを知り、人とのかかわりの大切さを学び、未来へつながる大人に育つよう、子供たちと一緒に学んでいきたいです。

■これから「社会教育主事講習」を受講される方へ

最初は初めて聞く言葉や法令が多く、社会教育の基本的なことを理解していないままの受講で不安だらけでしたが、まず社会教育を体系的に学ぶことができ、視野が広がりました。

また、私は仕事として、生涯学習センターの事業を実施するたびに、その事業の特性に沿って社会教育主事講習で学んだ経験が一つ一つ活かされているのが実感できるようになり、自信をもって企画や実施につなげることができるようになりました。

そして、何よりも社会教育は、「人と人、人と地域を『つなげる』ためには欠かせない」。そう実感できました。

研修会における講師として

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★「社会教育人材の養成及び活躍促進の在り方について(最終まとめ)」
中央教育審議会生涯学習分科会社会教育人材部会において「社会教育人材の養成及び活躍促進の在り方について(最終まとめ)」(令和6年6月25日)が取りまとめられました。↓↓↓