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「環境」と「自分の生活」との繋がりを感じてもらいたい【環境カウンセラー×社会教育士】
令和2年度から開始している「社会教育士」制度。社会教育士(社会教育主事)として活躍する方の活動、そして「社会教育」への想いの”記録”を新コーナー「わたしの社会教育士ノートsince2024」でフォロワーの皆さんと共有します!
※本記事の内容はあくまでご本人の報告に基づくものとなっています。
【わたしの社会教育士ノートsince2024 No.8】
「環境」と「自分の生活」との繋がりを感じてもらいたい【環境カウンセラー×社会教育士】
栫井 綾乃さん(公益財団法人かごしま環境未来財団)
KAKOI AYANO
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【経歴】
福岡県生まれ鹿児島育ち。鹿児島大学農学部在籍時に環境教育についての学びが興味のきっかけとなり、卒業後に北九州市環境ミュージアムにてインタープリターとして環境保全活動の普及啓発活動に従事。2014年から現在のかごしま環境未来館の指定管理者である公益財団法人かごしま環境未来財団に入職し、環境保全活動の普及啓発活動を行っている。2022年には環境カウンセラー登録。2023年社会教育主事養成課程修了。
「社会教育を学びたい」と思ったきっかけ
大学在学中から環境教育という分野を知って興味を持ち、社会に出てからずっと環境保全活動の普及啓発に関わる職務に携わってきました。
今のかごしま環境未来館では、施設の事業全般に関わり、地域でどのような役割を果たすことができるのか、施設の利用者にどうすればより環境について考えてもらったり、環境配慮の行動につながったりするのか、日々考えていました。また、地域の環境保全団体とも関わる業務に多く携わっていたので、そういった団体や人とのつながりやその支援についても思いめぐらせていました。
じつは恥ずかしながら、社会教育という言葉を知ったのは、最近になってからです。かごしま環境未来館のことを説明するときによく使っていた言葉は「環境学習施設」という言葉でした。業務にあたる中で、館や業務がどういったところに区分され、何を参考にできるのかを調べたときに「社会教育」という言葉を知り、当館も「社会教育施設」のひとつにあたると知りました。
そのような中で、通信制の大学で学芸員の資格を取得した際に、初めて社会教育士というものを知り、改めて学びを得ることが今後に役立つのではとの思いを持ち、さらに自分の行っている職務と社会教育士の近似性からぜひ学んでみようと思いました。
ちゃんと「社会教育」というものを学び施設運営に活かしたい、その思いから社会教育主事講習ではなく、あえて養成課程を選び、一つ一つ丁寧に単位を取得しました。もととなる考え方を知り、関連書籍を読むことを通して、業務との関連性をじっくり考えることができ、地域における社会教育や社会教育施設の役割を改めて見つめ直すことができました。
「考えてもらう」ために「伝える」ことを工夫する~私の今の仕事~
私が従事するかごしま環境未来館は、環境学習・環境保全活動の拠点施設として地球環境について考える人や行動する人を増やしていくために様々な事業を行っています。事業を企画・運営して啓発活動をすることが私の仕事です。自分では「考えてもらう」ために「伝える」ことを工夫する仕事だと思っています。
働き始めて最初のころは、直に来館者と話すことが多いところに配属され、団体見学での案内や講座などの企画コーディネートをしていました。環境について考えて行動を変えてもらうためにどう伝えるか、何を伝えるかを考え、実践する毎日だったように思います。
仕事をするうちに、インタープリテーションというコミュニケーション手法を知ったことは、この伝える仕事に興味関心を深めたひとつの理由です。インタープリテーションは、情報をただ伝えガイドするだけでなく、相手を引き込み相手の考え方を触発し、影響・刺激を与える伝え方です。この手法を知ったことで、目の前の人に、もしくはこれから出会う人に環境についてどう思ってほしいか、何を考えてほしいか、自分でも思いをもって人と接しています。一期一会でしか会えませんし、一人一人生きてきた背景も異なりますから、伝える仕事は難しいですがやりがいも感じています。
だからこそ、子どもたちから「(温暖化の影響を受ける)ホッキョクグマのためにできることをしたい」とか、「(実際に)水の使い方を工夫してみる」といった言葉をもらったり、大人の方には「子どもたちのために何かしたい」とか、「あたりまえだと思っていたことがそうではないことがわかって身が引き締まる思いだ」という言葉をもらったりするときには素直に嬉しく思いました。
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今は、イベントや講座の企画・運営でも全体コーディネートなど、とりまとめの仕事に多く携わっています。様々な事業がある中で特に面白さを感じているのが、環境保全活動に取り組む市民団体・NPO・事業者の登録団体制度とその登録団体と協働で講座を行う事業です。現時点で約80団体の登録があり、様々な立場の団体が、それぞれのやり方で活動をしていて、地球環境問題と一言で言っても、いろいろな問題への取り組み方があると感じています。
環境保全活動の輪が広がるように支援していくことは私たちの業務でもありますが、多くの団体に触れ知ることで、自分自身、環境への見方が日々広がっていますし、このような体験を他の方にも届けていきたいと思います。市民や団体から様々な相談や問い合わせがあるので、情報をお知らせしたり、情報にたどり着きやすいように提供の仕方を整えたり、時によって、団体や人を紹介して繋いだりして、誰かの役に立てることは、もっとも嬉しいことの一つです。
活動における社会教育士と環境カウンセラーの視点
私たちには、環境というテーマでいろいろな相談が寄せられます。それらに応えていくことは、私たちの仕事です。社会教育士としての役割と環境カウンセラーとしての役割は、私は非常に近いところにあると思っています。
様々な方に気軽に声をかけてほしい、相談してほしいと思うからこそ、環境カウンセラーに登録したり、社会教育主事養成課程を受けたりしました。だからこそ、あまり仕事での活動を社会教育士としてや環境カウンセラーとして…など分けて考えたことはほとんどありません。
あえて社会教育士と環境カウンセラーという視点で私の活動を考えてみるならば、例えば「自然観察会をしたいので、観察道具の貸出をお願いしたい。また生きものに詳しい方に話をしてほしい」、学校から「環境学習の授業の一つとして火山について学んでいて、桜島について詳しい人に話をしてほしい」、「団体でイベントをするので人を集めるにはどうしたらよいか」などの相談における、地域の方とのつながりを生かした人材紹介や環境保全活動のような地域活動を活性化させるための情報提供には、社会教育士の視点が活きるのかもしれません。
一方、「環境問題について話をしてほしい」「SDGsについて体験などを交えて学びたい」などの要望による環境に関する学習会の実施や数値等の資料提供などでは、環境カウンセラーの視点が活きているような気がします。
「環境活動をこれから行いたい。どうすればできるか」や「団体を立ち上げたい。どうしていけばよいか」など、環境活動を行う団体育成に関わる相談に対しては、社会教育士と環境カウンセラーの両方の立場で助言していると思います。
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豊かな環境を引継ぎ、持続可能な社会を目指して
現在、どんな年齢の人も、どんな役割・立場でも、どんな仕事についていても、それぞれが環境について考えなくてはならない時がきています。日本には季節があり、山も川も海もあり、自然が思いのほか身近であって、”あってあたりまえ”のように感じられるかもしれません。
”あたりまえがあたりまえ”でなく、環境を自分たちで守ったり、引き継いだりするために、まず環境について何か興味をもってもらうこと、そして自分と生活との繋がりを感じてもらうこと、それらが何かやってみることやその輪を広げていくことに繋がればと思っています。
そのためのきっかけは、じつは、身の回りにたくさんあって、社会教育もそのひとつだと思います。”持続可能”という言葉や”SDGs”という言葉は、現在多く聞かれるようになりましたが、だからこそすぐ「ふーん」と受け流してしまいがちです。受け流されないように、その一歩先に繋げるために、社会教育士や環境カウンセラーの立場で活動していけたらと思います。
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