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【解説】最近よく見るあのポンチ絵が意味するもの!?

【解説】↑↑↑最近よく見るこのポンチ絵の意味とは???

社会教育人材部会の最終まとめは、概要3枚、本文24ページ、参考資料集44ページの代物ですが、サムネイルにもなっているポンチ絵を理解すれば、ほぼクリアしたと言っても過言ではありません。

今回は、社会教育人材部会が描いた理想の社会教育の在り方について、あのポンチ絵が意味するところをご紹介します。

これからの社会教育が目指す方向性


社会教育は、社会教育法第2条に規定されるように「学校教育以外の組織的な教育活動」として非常に幅広い活動を指すものです。それらを振興する社会教育行政は、自治体レベルだと教育委員会が所掌し、事務局に必置とされる社会教育主事という専門的教育職員が、社会教育行政の中核を担っています。
 
一方、令和2年度から新たに、社会教育主事講習又は社会教育主事養成課程の修了者に対して社会教育士の称号が付与される制度が始まりました。これまでも、講習・養成課程の修了者で、社会教育主事にはならずに活躍されている方々が多く存在しましたが、令和2年度以降の修了者からは「社会教育士」として公の看板を背負って活動することが可能となったわけです。
 
令和5年度時点の社会教育士の数は、約7,000人です。従来、講習の主な受講者は、社会教育主事への任用を念頭に置いた教育委員会事務局の職員や学校の教職員でしたが、近年では首長部局の職員、NPO、民間企業の従業員も増えています。この傾向は、社会教育士そのものに価値を見出し、称号取得を希望する方が増えていると見ることができるのではないでしょうか。
 
講習の受講希望者は増加傾向にありますので、今後はますます、教育委員会、社会教育施設、学校、首長部局、民間企業・団体、地域コミュニティなどの、あらゆる所属・場所で、「社会教育士」として活動する方々が多くなっていくと考えられます。これら社会教育士は、学校教育、福祉、防災、観光、地域振興、まちづくりなど、それぞれの活動領域の専門性と社会教育の知見を組み合わせながら、地域や行政等と連携し、活動を活発化させていくことが期待されています。
 
このポンチ絵は、社会教育行政の主たる担い手である社会教育主事が、地域の各分野で活躍する社会教育士をはじめとする社会教育人材をネットワーク化することによって、「人材」をハブにした社会教育の振興を図っていく様子を描いています。端的に言うと、これからの社会教育の目指す方向性を示したものです。

「ネットワーク」という考え方


このポンチ絵は、社会教育人材部会の中で初めて示したものではありますが、この「ネットワーク」という考え方自体は、今回初出ではなく、過去を辿ると「ネットワーク型行政」という言葉などが使われてきています。例えば、答申で言えば平成10年、平成20年、平成30年と、少なくとも3回は提言されています。特に、平成30年答申では、かねてからの指摘にも関わらずその取組がいまだ十分とは言い難いとしたうえで、「ネットワーク型行政の実質化」という言葉が使われました。

現代においては、社会教育行政だけではなく、首長部局、民間企業・団体などの多様な主体が多様な学習機会を提供しています。「ネットワーク型行政」とは、社会教育行政が自前主義(=自分たちの持つ資源だけで学習機会を提供しようとするという考え方)からマインドシフトして、これらの多様な主体と連携・協働しながら地域住民に対する学習活動の支援をすべきではないか、という考え方です。
 
そして、今般の社会教育人材部会の中では、その手法論(=どのように実現するか?)として、社会教育主事、社会教育士をはじめとする社会教育人材をハブとすることが明示されたと理解しています。すなわち、社会教育主事が中心となって、地域の社会教育士や社会教育活動を行っている方々などをつなげていく「社会教育人材ネットワーク」を構築することが提言されました。この提言は、令和2年度の社会教育士の創設以降、その取得者数が増加傾向にあり、かつ多様な担い手に広がっていることに後押しされてのことです。

社会教育行政の捉える「社会教育」の広がり


社会教育は、冒頭ご紹介したように、「学校教育以外の組織的な教育活動」と規定されているとおり、その範囲は広範多岐どころか、無限の宇宙のような定義となっています。この中には、(当事者が社会教育だと認識しているかどうかは別として、)当然に民間の教育活動も含まれ、必ずしも教育委員会だけが担っているものではありません。一方で、社会教育「行政」として行われている主なものは、社会教育施設の設置・運営が中心であり、社会教育法第3条(国及び地方公共団体の任務)においても、まずそのことが規定されています。
 
これが、社会教育士の称号ができたことによって、社会教育行政の捉えられる範囲が広がってきているのではないかと考えています。これまで社会教育主事の有資格者ではありながら、社会教育主事以外の職において社会教育の知見を活かした活動を行ってきた方々が、「社会教育士」という法的根拠に基づく称号をもって活動できるようになったのです。社会教育行政としてこれまでフォローできていなかった活動を、社会教育人材ネットワークを通して、社会教育主事、社会教育士等の人材がつながることで行政としてもキャッチアップし、交流、情報交換、研修等を通じてそれぞれの社会教育活動、社会教育的な活動を活性化していくことが期待されます。
 
社会教育人材部会最終まとめでは、このポンチ絵が示す社会教育人材をハブにした目指すべき社会教育の在り方をまず提示し、後半部分においてその実現に必要な具体的方策を提言していく形となっています。

「社会教育人材の養成及び活躍促進の在り方について(最終まとめ)」(令和6年6月25日)↓↓↓