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広がる地域の輪~さらなる発展のために~【地域運営組織×社会教育士】

今回は、昨年8月に社会教育士の称号を取得された高知県南国市の前田さんに、持続可能な地域づくりの展望や「社会教育士」への期待についてお聞きしました! 前田さんは、PTA会長時にPTAからPTCA活動への発展を進め、また、公民館運営審議会の会長を務めるなど、若くして中心的な立場で社会教育・地域づくりの活動を経験され、現在も地域運営組織「チーム稲生」のメンバーとして、地域を豊かにする仕組みづくり、地元大学との協働活動など、幅広く地域づくり活動に取り組んでおられます。

[高知県]
南国市 市議会議員 前田 学浩(まえだ みちひろ)さん

・社会教育士(令和3年8月から)
・地域運営組織の「チーム稲生」の顧問
・南国市立稲生小学校地域支援本部地域教育協議委員、高知県地域学校協働活動推進委員(学校支援地域本部事業開始年度から現在まで)
・稲生の活動を全国に拡げる活動(講演&発表事例&講話)
南国市立稲生小学校・香長中学校、国立高知工業高等専門学校卒業後、外資系コンピューター会社の技術職として8年勤務。当時必要性が高まってきたテクニカルライターの勉強の為、会社から助成を受け、コピーライター養成機関・㈱宣伝会議で、専門コースを修了。長男誕生を機会に地元で上場企業になる建設機械開発会社にUターン。広報係を経て、企画会社に勤務。2007年11月より南国市議。2013年11月から2年間、南国市議会議長。


学校・公民館を核とした社会教育の基盤づくりが最も広く住民に共感が生まれる

―― 前田さんの現在の活動についてお聞かせください。

前田さん:地元の地域学校協働活動、公民館活動、地域運営組織活動、そして、高知大学との協働活動の連携サポートをしています。また、ここ2年間コロナ禍で少ないですが、稲生の地域づくりを全国に拡げる活動(講演&発表事例&講話)も行っています(令和3年3月にも「第32回全国公民館セミナー」で ~公民館を地域づくりの舞台にしていこう~ と題して講演)。 

画像8(高知大学 南国市稲生実習班と地域住民とのリモート会議)

―― ご自身のホームページで「生涯学習・社会教育の進化・浸透が地方創生の基盤となる。」と決意を示され、地域運営組織や地域学校協働活動など様々な活動をされています。「地域における社会教育の意義と果たすべき役割」をどのようにお考えでしょうか?

前田さん: 地方創生スタートの翌年、民主主義をテーマにしたテレビ番組で、京都大学名誉教授の佐伯啓思さん(こころの未来研究センター特任教授)がドイツの哲学者ミヘルスの言葉“鐘楼のパトリオティズム”を紹介し、「これからは、お寺の鐘の聞こえる範囲での生活を守る、大切にするという考え方が重要になる」と話されていました(プライムニュース,BSフジ,2017-07-07,テレビ番組)。日本は、学制より、お寺の機能は学校・公民館に移ったと考えています。地方創生の肝は、地方自治体の自立であり、地域住民の自立です。困難な社会的課題を共に解決していくためには、地域の学びのセンター機能である学校・公民館を核とした社会教育の基盤づくりが最も広く住民に共感が生まれ、効果的で期待できると思います。また、2005年からPTCA(PTAにC:コミュニティを入れた組織)に取り組んでいますが、好循環が生まれている実感もあります。

地域づくりとは、3匹目の子ブタが造る“レンガの家”だと思うのです。

前田さん:PTCAでの実感以外に、Uターン後、企画会社で市町村の特産品・加工品開発の企画なども行なっていた中で、“地域活性化”と“地域づくり”は、違うように感じていました。語弊があるかもしれませんが、“地域活性化”は、一過性の起爆剤を仕掛けるようなものだと思っています。違いについて、童話【3匹の子ブタ】のお話をよくするのですが、地域づくりとは、3匹目の子ブタが造る“レンガの家”だと思うのです。時間はかかるかもしれませんが、一つずつレンガを積み上げていくこの作業を多くの地域住民で行う術が社会教育にあり、どっしりとした地域づくりの形成のために、社会教育の果たす役割があると信じています。


現在、地域運営組織では公民館で、サロン活動による地域住民の健康づくりを重点的に行っています。人と人のつながりが社会疫学上、健康維持につながるとのことで、継続的に実施しています。

画像7(健康づくりサロンの様子)

また、毎年公民館で行われる住民の特定健康診断では、「健康感謝菜」と題して、地元野菜や地元食材の特製カレーを公民館で当日作り提供販売するなど、お祭りのようにイベント化し、受診率の向上に努めています。そのような地道な活動で、国保医療費が毎年激減しており、2020年秋には、県知事と県国保連合会から活動が認められ、国保賞を受賞(賞金10万円)しました。高齢化率が南国市内平均と比べ、10ポイント以上高いのに、年間の国保医療費が一人あたり、11万円低いことも調査作業内で確認できました。(南国市役所の国保担当の市民課調べ)

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持続可能な地域社会の創造の為にIZM+i(湧きあがる泉)

―― 令和2年度から、社会教育主事講習及び養成課程を修了した者は、「社会教育士」と名乗ることができるようになりました。また、ご自身も夏に「社会教育士」となられました。この社会教育士について、これからの期待も含めてお聞かせください。

前田さん:昨年6月に、コミュニティ・スクールの在り方等に関する検討会議が開かれて、その場で、稲生地区の活動が総務省側からの地域運営組織との連携として紹介をされました。コミュニティ・スクール、地域学校協働本部の持続的な活動を担保していくためには、在り方検討会の議論の中で「学校側にも社会教育主事経験者や社会教育士が必要、中堅や若手の段階から社会教育の視点を持つことも必要」とありますが大いに賛成です。
また、同時に地域側に、社会教育士がいると持続発展が担保されていくことは容易に想像できます。
老子の言う最高のリーダーとは、「周りの人々に存在感を感じさせない人」(田口佳史(2018)『なぜ今、世界のビジネスリーダーは東洋思想を学ぶのか ー史上最高のビジネス教養「老子」「論語」「禅」で激変する時代を生き残れ』 文響社‎.)ということだそうですが、それは、人ではなく、その地域の主義・イズムだと思います。そのイズムを【持続可能な地域社会の創造の為にIZM+i(湧きあがる泉)】の思想が必要で、このi(時代に相応しいイノベーション)を起こし創り上げていくのが、社会教育士の理想像だと思います。

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一人のリーダーに頼るのではなく、多くの地域住民のリーダーシップの涵養が必要だと思います。

―― 人生100年時代、少子高齢化、Society 5.0、グローバル化など、社会は大きく変化し、予測困難な時代を迎え、一人一人がより豊かな人生を送ることのできる持続可能な社会づくりを進めることが必要となります。前田さんは、(社会教育を基盤として)どのような地域をつくっていきたいと思っていますか?

前田さん:地域コミュニティの再構築ということについては、現在の知の巨人と言われているユヴァル・ノア・ハラリ氏が「21Lessons」著書(ユヴァル・ノア・ハラリ(2019)『21 Lessons-21世紀の人類のための21の思考馬鹿について』(柴田裕之訳)‎ 河出書房新社.)の中でふれ、FACEBOOKの創業者でさえ、SNSでは解決できなかったと結論づけたことを報告しているように、非常に困難な社会的課題です。
しかしながら、この課題を無視していく訳にはいきません。先ほどの続きのようにもなりますが、一人のリーダーに頼るのではなく、日本人が最も得意としていた農作業を共同体で行っていた歴史などから連携・協働を社会教育の術で行うため、限られたリーダーだけでなく、多くの地域住民のリーダーシップの涵養が必要だと思います。
そのための必要なリーダーシップとは「人々に愛情を注ぐ、その行動の中に何とかして踏み留まる」(ハーバード大学ケネディスクール ロナウド・ハイフェッツ教授)(ハーバード リーダーシップ白熱教室,NHK・Eテレ,2013-11-01,テレビ番組)これこそが、SDGs時代を乗り切るための精神であり、社会教育の術で優しく、優れた「なんとかして踏みとどまる」人材を増やしていき、持続可能な地域づくりをしていかなければと思います。
3匹目の子ブタに負けるな!! FB創業者を驚嘆させよう!! 課題は、仮想空間のメタバースの中ではない!!です。

画像3(のぼり旗あげて楽しく!健診を!!)

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