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いなかのファンを作り、文化伝承に尽力するwebライター【記者×社会教育士】

令和2年度から開始している「社会教育士」制度。社会教育士(社会教育主事)として活躍する方の活動、そして「社会教育」への想いの”記録”を新コーナー「わたしの社会教育士ノートsince2024」でフォロワーの皆さんと共有します!
※本記事の内容はあくまでご本人の報告に基づくものとなっております。

【わたしの社会教育士ノートsince2024 No.6】

いなかのファンを作り、文化伝承に尽力するwebライター

田中 寛人さん(いなか伝承社 代表)

【経歴】
和歌山県生まれ。民間の製薬会社、食品開発支援会社、和歌山産品の通販会社、旅行会社、地域おこし協力隊隊員を経験。会社員を辞めて高知県四万十で実践的な地域づくり(移住促進、都市農村交流、地域のファン作りなど)について学び、2013年に和歌山にUターン。
同年、地域づくり支援・実践を目的に民間会社「いなか伝承社」を立ち上げ、和歌山県や他県において各地の地域団体と連携し、現在まで多様な支援・実践活動を実施。
専門としては、それぞれの地域の特徴・多様性(「地域資源」と呼称)を現地調査し、地域資源の『見える化』として商品化や体験コンテンツ造成などに展開することで、地域で埋もれているモノの価値を再デザインし関係人口増加につなげている。
加えて、Yahoo!ニュースとLINEニュースにて和歌山の北部地域を取材して情報発信する記者として幅広く活動中。



地域づくりのスペシャリストが社会教育士に

—  「社会教育士」の称号を取得したきっかけとは?

もともと、2013年に立ち上げた「いなか伝承社」の取り組みの中で、地域資源を活かした体験コンテンツ造成・実践を11年前から日常的に行っておりました。実際の体験内容は多岐にわたれども、その目的は全て共通して「地域の文化や民俗、生態系などの学びの提供」であったため、社会教育士という称号の存在を知った際に「自分が既にやってきたことは社会教育にもなっている」と分かり、その延長にある社会教育士を取得しようと思いました。


―  実際に「社会教育主事講習」を受講されてどうでしたか?

令和5年度に、北海道立生涯学習推進センターで実施している社会教育主事講習を受講しました。標高の高い山村住まいのため冬季に出かけるのが難しい中で、全てネットで受講できることも応募できた理由でした。

また、受講の中で社会教育と学校教育との違いや、公民館・図書館側の状況について他の受講者の実際の話を伺えることができ、勉強になりました。(ネット講習で休憩時間が決まっているのでたくさんは話せませんでしたが・・・)


高野山麓のフィールドを活かした社会教育

―  田中さんにとっての社会教育とは?また、社会教育士として意識していることは?

社会教育とは、私が行う社会教育の企画も他の方が行う企画も、影響力の大小の差はあれども、全てが地域おこしに資することだと思っています。

私が提供する社会教育の体験コンテンツは、学びを通じた人の繋がりづくりや知識や知恵の提供、農山村の暮らしに対する理解の深化などにより地域活性化に資するものと思っています。

未就学児を対象とした「もりの幼稚園プログラム」の1コマ


また、Yahoo!ニュースで配信する情報についても単に表面上の情報を流すだけではなく、新しい視点・新しい学びを読者にもたらし、地域の方が何かアクションを起こすことを期待した内容を裏テーマにして意識して執筆しています。


―  社会教育士として「地域資源」を活用したエピソードはありますか?

日本最期の木工製品(消耗品)を作っている職人の工房体験プログラムを開催したエピソードです。

その職人の工房は普段は非公開で、製品も通常は問屋を通してのみ流通しているので、一般の方はどこでどんな風に作られているのかを知ることがないのと、素材が非常に貴重な銘木の木材を使っているにもかかわらず、その価値が知られていませんでした。そのため、製品の魅力・価値、職人の想いや実際の技術、工房の雰囲気などを感じてもらいたくて工房体験プログラムを実施しました。

結果、事前に職人のスゴさを情報発信していたこともあり、各地から参加者が集まり「ヒト・モノ・コト」の価値を知り、学び、素晴らしい製品だと理解して頂きました。

工房体験プログラムの様子

さらに、参加者が自主的に山奥の工房を訪問し、職人とつながり、商品を購入し、その商品をアレンジしてSNSでどんどん発信し、大学の先生は木材加工の研究に訪れ、工房の後継者候補も現れ、職人を取り上げる全国放送のテレビ番組にも取り上げられ、様々な繋がりを作ることが出来ました。

また、職人は既に80歳を超えていることから販売促進が目的ではなく、

「これまで消耗品だった製品のことを知ってもらって、その価値に気づいてもらい、消耗品以外の使い方が増えたこと」

に職人にも大変喜んでもらえました。


―  田中さんが考える地域で抱えている課題・問題とは?

日本全国ほとんどの都道府県であるにもかかわらず、和歌山県は県全体の情報が掲載された日刊の新聞が存在していません。(情報は全国5大紙の2ページくらいの和歌山欄のみ)

なので、子ども達は受験の際に新聞を読む機会があったりすると思いますが、地元のことや和歌山県全体のことを知ることなく旅立ち、地元の住民も地域にどんな人が居て、どんな会社があって、どんな志で、どんなことをしているのか、あるいは四季の細かな産物なども知ることが非常に難しい状態です。※フリーペーパーもありません。

その状況を少しでも改善するためにも、地域の情報発信が重要だと思っています。

また、どの地域でもそうですが、過疎化・高齢化・空き家問題・移住者確保・新産業育成などさまざまな課題がこの地域にもあります。ただ、現実的に行政も第三セクターも自分たちで考えてクリエィティブな課題解決の仕組みを作ることには関心が薄く、地域住民も危機感が薄く行政に丸投げになっており、結果として衰退がどんどん進んでいます。

私がつくりたい地域の姿は、「多様性が目に見える地域」です。

Aというおばあちゃんはカゴが編めます。Bというおじいちゃんは川釣りを教えられます。そんな地域住民の各々の持つ、埋もれているスキルを可視化して、それに対して関心のあるよそ者が学びに来る仕組みを作り、学びの対価として地域にお金も落としてもらい、地域を人を好きになってくれたら移住者として来てくれて、地域の多様性が残るようにしたいです。

50年以上自然農法を実施しているおばあちゃんを講師
として開催した実践体験イベント風景
身近な自然をまるごと頂く「採って食べる」イベントの1コマ
(野草+ジビエ+昆虫食)


―  今後、社会教育士として活動していく意気込みを教えてください!

私の活動としては、情報発信を通じて、地域側に対して地域のつながりや魅力再認識を促し、体験プログラムを通じて、よそ者が地域に入るきっかけ、学びのきっかけを創って関係人口を増やし、移住にも地域課題解決にもつなげるような取り組みをしていきたいと思っています。

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たらい船を使った「一寸法師体験」イベントに参加したご本人


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