2児のママ、そして社会教育主事であり、社会教育士【生涯学習センター×社会教育士】
令和2年度から開始している「社会教育士」制度。社会教育士(社会教育主事)として活躍する方の活動、そして「社会教育」への想いの”記録”を新コーナー「わたしの社会教育士ノートsince2024」でフォロワーの皆さんと共有します!
※本記事の内容はあくまでご本人の報告に基づくものとなっております。
【わたしの社会教育士ノートsince2024 No.1】
~ 1歳と0歳、2児のママ、そして社会教育主事であり、社会教育士 ~
斉藤 綾香さん(北海道立生涯学習推進センター 社会教育主事)
「やってみない?」教育局から来た1本の電話 ~ 社会教育の世界へ ~
―― 「社会教育士」の称号を取得されたきっかけ
社会教育との出会い。それは「やってみない?」という社会教育主事の方から来た1本の電話がきっかけでした。
当時、私は中学校の教員をしており、勤務校は隣の中学校と統廃合を機に閉校することが決まっていました。中学3年生の担任をさせていただいていて、閉校後はきっと統合先の中学校へ異動するんだろうなぁと思っていました。
そんなタイミングで来た1本の電話。子供たちと関わる仕事以外の職については考えていませんでしたが、断る前に一度話だけでも聞いてみようと思いお返事をしました。
話を聞いているうちにいつの間にか話が進んでしまい、勧められるがままに、社会教育主事講習を受講していました(笑)。
学校教育以外についての様々な話を聞き、自分は狭い世界にいること、知らないことがまだまだいっぱいあるということを実感しました。「教え子たちや同僚、お世話になった保護者の方や地域の方に何らかの形でお返しをしたい」、「それならしっかり知識を身に付けてからでも遅くはないのではないか」。そう思い、ちょっと冒険してみようと社会教育の道へ足を踏み入れてみました。
学び合うプロセスで「きっかけ」を与える社会教育
―― 斉藤さんにとって「社会教育」とは
私自身、まだまだ社会教育の経験は浅いですが、「社会教育って、出身地や年齢、職業などが異なるいろんな人たちが共に学び合うプロセスで「きっかけ」を与えるものなのでは?」と思っています。
かつて、道立の青少年教育施設で駐在社会教育主事として、勤務していた時のことです。私は、十勝管内の中高生を対象としたジュニアリーダーコースという事業の企画をしました。
ジュニアリーダーコースは2泊3日の宿泊事業で、中高生が感じている自分の住むまちの課題について持ち寄って、その課題を解決するために、または各地域の良さを伸ばすためにどのような手立てがあるかを考えます。最終日には、グループごとに企画した事業を発表するといったプログラム内容になっています。
グループ活動を進めていく中で、時には意見がぶつかり合うことがあるかもしれない。そういった場面を想定して、初日の夜に、自分の考えを伝える、相手の考えをしっかり聴く、自分と違う考えを認め合い、グループの考えを1つにまとめるといったプログラムを行いました。
そのような活動を通して、子供たちは他人の考えにもしっかり耳を傾け、出た意見を否定しない、「そんな考え方もあるんだね」と自分と異なる意見を受け入れるといった様子が見られ、他者理解を深めるきっかけになったのかなと感じました。
また、2日目には、実際に十勝管内でお仕事をされている方、移住してゲストハウスを営んでいる方、地域おこしをされている方をお呼びし、中高生に対してお仕事の内容や十勝管内の地域についてお話しをしていただき、中高生と交流をする場面を設定しました。
そんな中、様々な職種の方との交流する場面で、とある参加者が、質問をします。
質問した参加者は、「私たちのような子供が何かを言ったところで何も変わらないのではないか」と思っていたようでしたが、「私たちにも地域を変える力があるのかもしれない」と気持ちの変化が見られたのが印象的でした。
最終日の発表のときにも、お話ししていただいた十勝管内の地域の方に来ていただき、グループで作成した事業の企画案を見てもらいました。発表を見た地域の方から、「何かあれば力になります」といった嬉しいご意見・感想がありました。
違う学校に通う中高生同士をつなぐ、また、地域の方々と中高生をつなげることができるのは、社会教育ならではの魅力の一つだと思います。
最初はバラバラだった子供たちも、最終日にはお互いが別れを惜しみ、姿が見えなくなるまで見送っていた姿がとても印象に残っています。人と人とのつながりの大切さを、ジュニアリーダーコースでより一層感じたのかもしれません。
後日、参加者の中高生から「もう一回ジュニアリーダーコースをやりたい!」といった嬉しい声が届いたり、ジュニアリーダーコースで経験したことが、学校生活に生かされている様子が見られたりしました。
私たちは学校の教員のように、卒業まで子供たちを見届けることはできません。しかし、ジュニアリーダーコースのような事業を通して、学校外で子供たち同士の新しい出会いをつくったり、視野を広げたり、気持ちの変化が生まれたりするようなきっかけをつくることは、社会教育に携わっていないとできなかった経験だと思います。
事業を実施したからといって、目に見える形ですぐに子供たちに変化が現れるとは限りません。しかし、参加した子供たちが将来、「あのときの経験が役に立ったなぁ」と、この事業を思い出して何か行動に移すきっかけになったのであれば、とても意味があった事業だったのだと思います。
今は、生涯学習推進センターに勤務していますが、いまでも自分自身が研修を企画・立案するとき、研修の内容が参加してくださった方々の何かの「きっかけ」となり、道内の各市町村職員の皆様へ、少しでも還元できるといいなと思い内容を考えています。
逆に、研修に参加してくださった方々との情報交流で、各市町村の社会教育主事や社会教育士の方の取組や、そこにたどり着くまでの苦労を伺う中で、私自身が考えるきっかけをいただくこともあります。社会教育とはこうしてお互いに学んでいく中できっかけを与え合うものなのではないかと思っています。
ちなみに、現在の職場では、様々な方面から情報の提供を求められます。(「きっかけ」の提供といえるかもしれません。)
例えば、「好事例はありませんか?」「~について情報をください」などの照会がきたり、研修会で情報提供をしたりすることがよくあります。情報は勝手に入ってくるわけではなく、情報を集めないといけないというときに限って情報は集まりません。日頃から情報を引き出せるように、「この事業おもしろそうだなぁ」「こんなことをやっているんだなぁ」と気付く心を養うよう意識しています。
広大な北海道と社会教育、そして育児
―― 今後の意気込みについて
皆さんが想像する以上に、北海道はとても大きいです。それゆえ、各地域(道内には179の市町村があります)、それぞれ特有の課題を抱えていると思いますが、やはり人口の減少、それに伴う地域の担い手不足は課題です。
また、社会教育主事として各市町村の方々と地域課題の解決に向けて共に考え、地域の良さを伸ばし、誰もが安心して生活できる地域をつくっていきたいです。そのお手伝いができるよう、自分自身も市町村の方々と一緒に学び続けていきたいと思います。
ただ、私的な事情になってしまいますが、まだ子供が小さいため、道内各地へ行って地域の方々と交流することができていません。なので、子育てが落ち着いたら少しずつ道内各地へ足を運び、様々な方と交流したいなぁと思っています。もちろん機会があれば、本州の方々とも交流し、「社会教育主事(社会教育士)といえば斉藤って人がいたよね!」と頭の片隅にでほんの少しでも記憶していただけるように、たくさんの方々と繋がっていきたいです。そのために、一つ一つの人との出会いを大切に、今自分にできることを積み上げていきたいと思います!